1979年4月7日。TVで『機動戦士ガンダム』の放 映が始まる。後に言う「1stガンダム」であり、ここからガンダムの歴史はスタートした。 人気アニメ監督富野由悠季のアニメだが、放映開始当時 アニメファン以外にそれほど注目もされなかった。 放送が終わる頃、ガンダムファンと呼ばれる人達は、増 えに増え、その人気から3部作の映画になる。 ガンダムのキャラクターデザインとアニメーションディ レクターであった、安彦良和氏が、番組後半で体調を崩し、制作から離れてしまい、作画LVなどに不満があったため、それを映画でやり直したい、そういう事 情もあった。 この映画が公開されるに到って、ガンダムファンの盛り 上がりは最高潮を迎え、各種メディアでも報じられる。 この盛り上がりは、それだけで終わらなかった。 四半世紀以上経った今も、TVでは新作のガンダムアニ メが放映され、TVゲームでも新作は次々に出て、各種グッズ、関連&パロディ本など、尽きることが無い。 今や、ガンダムは1st世代以外にも、広まりを見せ、 アニメやゲームのジャンルそのものに「ガンダム」という名を刻んで不動の物にしていることは間違いではない。 1st以降、TVアニメで『Zガンダム』、『ZZガン ダム』、劇場映画で『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』、オリジナルビデオアニメーションで『0080ポケットの中の戦争』、『0083スターダストメモ リー』と、ガンダムの中の歴史が紡がれているのだ。 上記以降も、ガンダムは継がれているため、ある種の 「これは知って当然」的な設定などが、結構多く存在している。 そのため、ガンダムを1度見た程度では、なかなか理解 出来なかったり、 「実は今までガンダム見たこと無いけど、今さら言えな い」 なんて不届き・・・ぁゎゎ、いや、悩める子羊も多々い るのだ。 今回、今までガンダムを見た事の無いガンダム初心者の ために、ガンダムの序盤のストーリーと、それに至るまでのガンダム世界の各種設定を、わかりやすく説明し、「1stガンダム」を見る予備知識として参考し て貰おうと思う。 −ガンダム第一話 − ”人類が増えすぎた人口を、宇宙に移民させるように なって、すでに半世紀。 地球の周りには、数百機のスペース・コロニーが浮か び、円筒の内壁を人工の大地とし、そこを第二の故郷として、人々は子を産み、育て、そして死んでいった。 宇宙世紀0079(ダブルオーセブンティナインと読 む)、地球から最も遠い宇宙都市、サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に対し独立戦争を挑んできた。 この1ヶ月あまりの戦いで、ジオン公国と地球連邦軍 は総人口の半分を死に至らしめた。 人々は、自らの行為に恐怖した。 戦争は膠着状態に入り、8ヶ月あまりが過ぎた・・・” 宇宙空間を3機のジオン軍のモビルスーツ(以下 MS)”ザク”がコロニーへ侵入した。シャア少佐配下のデニム曹長率いる偵察部隊だった。 中立のコロニー群、サイド7のコロニーの1つに連邦軍 の新鋭艦が入港したのを追っての事だ。 スレンダーをコロニー入り口に残し、デニムとジーンが コロニー内部に降りるが、ジーンが、まだMSを持たない連邦が、開発に成功したMSを発見、これを叩こうと独断で攻撃する。 連邦軍の新鋭艦「ホワイトベース」は、このガンダムと 支援MSを積み込むためにサイド7まで来たのだった。 連邦がジオンに後れをとっていたMS開発、MSとそれ に伴う運用艦の開発こそ連邦の至上命題であり、それこそが「V作戦」であった。 ゲリラ掃討作戦から帰還途中のシャアは、このV作戦を キャッチ、ホワイトベースを追ったのである。 サイド7に住む少年、アムロ・レイは、この連邦が開発 に成功したMS「ガンダム」の開発責任者テム・レイの息子だ。地球に母親を残し、1人で暮らすアムロは極めて内向的な少年で、コンピュータや機械いじりが 好きな少年だった。今で言うならオタクと言ったところだろう。 ザクと駐留連邦軍が交戦する中を、アムロは幼なじみの フラウ・ボウとコロニーの中を、宇宙港目指して逃げた。その最中、アムロは父テムを見つける。 父は避難民より「ガンダムを優先しろ」と、部下に命令 していた。フラウがアムロを呼びに駆け寄った時、フラウの背後でミサイルが爆発する。 フラウの家族はその爆発で全員死んだ。泣き崩れるフラ ウに、「君は強い女の子じゃないか」と、彼女を走らせる。 逃げる途中、攻撃でやられた連邦軍士官のガンダムの資 料を、偶然手にしたアムロは、ガンダムのコクピットへ走った。 こうして、アムロはガンダムに乗ることになるのだっ た。 コロニー内の連邦軍の装備はMSにかなうはずもなく、 全滅に近い状態になる。 ザクがアムロの乗り込んだガンダムを攻撃するが、ガン ダムの持つ装甲はザクの120mmマシンガンをまともにくらってもビクともしない。 アムロはガンダムのその性能で、ジーン、デニムのザク を撃破するが、その際MSの核エンジンが爆発、コロニーの内壁に穴が開いた。 こうしてホワイトベースは、コロニーの避難民を乗せ、 サイド7を離れることになる。正規の乗組員は、ザク2機の応戦に出た際に、ほとんどが戦死。艦長のパオロ大佐も、シャアのムサイ級巡洋艦ファルメルの攻撃 で負傷、新米士官のブライト・ノア少尉が艦長代行とし指揮を執り、操舵手は民間のミライ・ヤシマ嬢が、という寄り合い所帯での出航である。 しかし、「赤い彗星」の異名を持つシャア・アズナブル 少佐が、ホワイトベースを見逃すはずが無かった・・・。 −1話以前のガン ダム− 初っぱなのナレーションで、「開戦から8ヶ月が過ぎ た」といきなり戦争の真っ最中であることを告げられ、戦争とコロニーが落ちる様を見せられる。ガンダムの放映は、宇宙世紀0079年の9月〜12月までの 話であるが、その戦争の開始から9月まで、そして戦争に到るまでの話が抜けている。 劇中様々な場所で、それらを匂わせる台詞が散りばめら れているが、放映当時少年や幼かった人には、それらを把握することは難しい。 再放送や、ビデオ、LD、近年になってDVDを繰り返 しみて、わかる程度のものなのだ。 ガンダムの世界の宇宙開発史と、後に一年戦争と呼ばれ る1stガンダムの開戦以降を簡単に見てみよう。 −宇宙世紀元年− 当初の予定では西暦1999年が宇宙世紀0001年に なる予定だったが、ガンダム世界は現在でも、広がりつつあるため、今は具体的な数字は無い。 宇宙世紀は”Universal Century”とU.C.表記させるが、定着はしていない。サインライズなどが、定着を目指しているので、一応片隅に止めておいて欲しい。 宇宙移民元年が、宇宙世紀元年となった。地球の人口は 90億人を越え、地球環境の悪化は、すでに地球上のみを人類の居住空間とするには、限界を超えていた。 スペースコロニーの開発が行われ、宇宙世紀0027年 には、月の恒久都市「フォンブラウン」が完成。ここが宇宙開発と移民の拠点になる。 30年代にはフロンティア開発移民移送局を民営化、宇 宙引越事業団の発足とNGO化、宇宙引越公社となる。 宇宙移民へのシステム構築と、連邦政府による専有化で ある。 40年には宇宙移民は総人口の40%に達した。ヒマラ ヤと月のマスドライバーは、それぞれ人と資源を、コロニーと建設宙域であるラグランジュポイントに、打ち上げ続けた。 当初、宇宙移民計画は、「全人類の移民」を標榜してい たが、結果としてそれは果たせなかった。全人類を移民させ地球環境を再生させる「地球環境再生計画」こそが、そもそもの目的であったのだが。 移民させられた者は、社会的には弱い者や低所得層か ら、 まず強制移民をさせたのだが、後に残った権利者は、地球に残れるという一種のエリート意識から、地球に居座り続け、地上から宇宙を支配した。 すでにこの時代になって、スペースコロニー生まれが、 第一線で働くようになっている。彼らは「スペースノイド」と呼ばれ、宇宙生まれの宇宙育ちで、地球生まれの「アースノイド」は、自分たちをエリートであり 支配者である、という構図を作り上げた。 50年代には110億を越えた人口の90億を移民さ せ、新規のコロニー開発は中止された。 コロニーはラグランジュポイントごとの宙域のコロニー 集団を、「サイド」と呼び、自治政府が存在した。 しかし、連邦政府によって交易や生産を支配され、コロ ニーと地球間の不平不満の種は、この頃から大きくなり始める。 つまりは、「アースノイド」と「スペースノイド」の対 立である。 ・「ラグラン ジュポイント」 ラグランジュポイント(もしくはラグランジュ点)、と 言う言葉は正確には「ラグランジュの平衡点」と呼ばれるものだ。 宇宙空間にモノを置いた場合、「静止するモノは静止し 続け、動くモノは動き続ける」が、地球などの惑星は、それぞれ公転周期で楕円運動している。 これらの惑星と、それぞれの衛星などの重力間での、公 転周期に同調出来るポイント・空間のことを、ラグランジュポイントと呼ぶ。 地球と月の重力バランスの取れている宙域、一緒に太陽 の周りを回れる場所、と思って貰いたい。 実際、いくつかのラグランジュポイントが発表されてお り、ガンダム世界でもそれに則っている。 −ニュータイプ− 新人類のことである。ジオン・ズム・ダイクンの唱えた 説で、「宇宙に出た人類は、重力というしがらみから解放される。宇宙という解放された世界で、そこに適応した人類は、よりわかりあえる存在になる。それが ニュータイプである」と、わかりやすく言えば、こんなカンジだ。 重力に縛られた人の心、感性が、360度解放された宇 宙空間、そこに出た場合、人類の優れた環境適応能力は、そこに適応する。その時、人は心と心を解放しあい、より直感的に分かり合うことができる。 ジオンは、これが「人の革新」すなわち「ニュータイ プ」だと説いた。 ガンダム世界では、アムロが劇中、中盤前あたりから、 優れた直感と閃きを見せる。アムロがニュータイプとして覚醒しつつあるのだが、パイロットとしてのニュータイプ能力は、「よりわかりあえる」が、「敵を上 手く察知出来る」と言うことになってしまう。相手や相手の動きをより鋭敏に察知してしまう、とも言えるだろうか。 連邦軍の上層部などは、「ちょっとしたエスパー」や 「戦闘の上手い人」と言った観点で捉えるが、もちろん本来のニュータイプの意味を、極めて狭い視野で捉えたものでしかない。 「ジオンの言ったニュータイプって、そんな便利なもの なんかじゃ、ないんですけどね」 と、ジオンの娘であるセイラさんが劇中で語る様 に・・・。 しかし、戦争である限り、その能力が本来の説いた意味 通りには、果たして上手くいかなかったのだ。物語終盤、アムロは悲劇にあい、苦悩と共に生きることになった。 ジオンは優れた思想家であると同時に、指導者でもあ り、地球から最も遠い月の裏側にあるサイド3に移住、ここで「コロニー国家主義」であるコントリズムを実戦、他のコロニーを説いて周り、優秀な人材をサイ ド3に集めた。 宇宙世紀0058に、サイド3は「ジオン共和国」の樹 立と独立を宣言。 「地球を聖地とし、人類は皆宇宙に住むべきだ」 とこの頃ジオンは唱えたが、後代これは実子キャスバル に引き継がれる。 宇宙世紀0068にジオン・ズム・ダイクン暗殺。 公式には病死だが、側近のザビ家による暗殺は公然の事 実であった。 翌年には「ジオン公国」となり、デギン・ソド・ザビが 公王に就く。ジオンの民主的なやり方では、真の意味での独立自治はほど遠い、と考えたザビ家一派の独裁開始である。 ジオンの側近ジンバ・ラルは忘れ形見のキャスバル、ア ルテイシアの兄妹を地球へ逃がし、マス家の籍に入れて匿った。しかし兄キャスバルは、ほどなく消息を眩ました。アルテイシアはマス家の名前のまま改名、 「セイラ・マス」と名乗る。 キャスバルは、劇中秘されてはいるが、セイラと出会 い、その人が知れた。 シャア・アズナブルがキャスバルだったのだ。 「ニュータイプ」という言葉は、ガンダム、Zガンダ ム、ZZガンダム、と宇宙世紀の話の、物語の要素となるキーで、アムロ達の存在しない世代、ガンダムF91や、Vガンダムの作品中にも、ニュータイプは重 要な役割として存在する。 人と人が、より分かり合う、と言うことはどういうこと なのか?ガンダムが劇中に問いかける1つのテーマなのだ。 −ガンダムの科学 力・ミノフスキー粒子− ガンダムの世界は、先にあげた「ラグランジュポイン ト」の様に、実際に科学に基づいて設定されている。 ガンダム世界のコロニーは「オニール型」と呼ばれるも ので、現在の宇宙コロニー構想のモノとは違うものだが、当時はコスト面などでこのタイプが採用されたようだ。 コロニーは直径6.5km、全長30km(最近の本で は40kmになってるのもある)で、円筒型をしている。見て貰えば一目だが、円筒の片側から長大な偏光ミラーが伸びており、それで昼夜を再現。また発電も 行う。ミラーの付け根の部分がコロニーの管理区域で、宇宙港などもそこに存在する。円筒のシリンダー部は回転し、自転によって重力を発生させている。 コロニー1機を「1バンチ(番地)」と呼び、1バンチ の人口はおよそ2千万人〜2500万人程度と推測できる。 1つのサイド(コロニー群)で、およそ40バンチ程度 あったと思われる。 蛇足ながら、円筒のシリンダー部の半分がミラーからの 太陽光を取り入れる透明部(河と呼ばれるガラス面)になっているが、サイド3のコロニーは透明部が無く、すべて陸地にしてしまっている。単純に陸地面積が 倍になって、人口が倍にまで耐えうるからである。 実際の科学として、研究されていたものだが、そもそも ガンダムは「ロボットアニメ」であり、ロボットつまりはMSが、何故存在しなければならないのか?と言う疑問がある。 ここにガンダム世界の「架空」があって、それこそが 「ミノフスキー粒子」であって、そこに起因するのだ。 −ミノフスキー粒 子− 宇宙世紀0045年、サイド3にミノフスキー物理学会 が設立される。 ミノフスキー粒子を応用した核融合炉などが、開発され ていくが、このミノフスキー粒子は、”なんでも粒子”と呼ばれるほどに、幅が広い設定(ほとんど後付)だ。 核融合炉による原子力エンジンには、ガンダム世界には 「ヘリウム3」が利用されている。これは木星に存在しており、宇宙世紀ではこれを利用するために木星船団が存在、運営されており、木星までヘリウム3を始 めとする各種資材を採取しに行き、地球圏へと運んでいた。 現在ではこのヘリウム3は月にも存在していることが、 ガンダム放映以降の宇宙開発によって明らかにされている。 今の科学でも、核融合は安定させるのが難しいが、これ を可能にしたのがミノフスキー粒子である。 トレノフ・Y・ミノフスキー博士によって発見されたこ の粒子によって、融合炉を安定させることに成功させたが、この過程によって特殊電磁効果が発見され、ジオンはこれを切り札として、極秘にした。 では、ミノフスキー粒子とは、如何なるモノか?簡単に 列記、説明しよう。 ・そのまま散布すると、各種電波を妨害できる。 ・ミノフスキー粒子を縮退、プラズマ化すると、荷電粒 子砲(ビーム砲)として兵器利用出来る。 ・散布した粒子に電荷をかけると立方格子が形成され る。このエネルギー力場を「Iフィールド」と呼ぶ。この力場と反発する作用を利用して、大気中に反発作用で浮く「ミノフスキークラフト」が可能。 ・上記の「Iフィールド」の強力にすると、ビーム兵器 を弾く、一種のエネルギーシールドが出来る。 これがどういう意味か説明すると、電波やレーダー、そ れにともなう兵器が使用出来なくなってしまい、戦闘が有視界や光学に頼るものになってしまった。 レーダーによる捕捉誘導する兵器、ミサイルや戦艦の主 砲などにしてもレーダーロックオンは当然するので、それらが無力化してしまう。 ガンダム第一話で、ザクを攻撃する連邦軍のミサイルは 有線誘導なので線が付いているのが見える。 そこで開発されたのが、作業用ロボットから転用開発さ れたモビルスーツである。 宇宙世紀0073に開発に成功したジオンは、早くも翌 年には量産準備に入り、0075年には量産、MS−05と型式番号が付けられた。第一話から登場するのはMS−06ザクであり、05は旧ザクと呼ばれる。 少し正確に言えばMS−06Fザク2であり、他にも地上型のJタイプ、指揮官型のSタイプ、開戦当時のC型など各種タイプが存在した。 要は、有視界での殴り合う兵器である。このために人型 兵器が作られたのだ。ジオンはMS開発で優位に立っており、連邦軍はたかが辺境サイド、とジオンを侮ったためにMS開発をおろそかにした。ガンダムは連邦 軍のMS1号機なのだ。 大型の宇宙戦艦の主兵装が、荷電粒子砲でありガンダム では「メガ粒子砲」と呼ばれる。 本来、大型の宇宙艦にしか技術的には難しかった「メガ 粒子砲」を連邦軍はMSの武器として小型化させてしまう。これがガンダムの武器なのだが、ザクの持つマシンガンやバズーカなどの実弾兵器と比べて、威力は 圧倒的に上だった。 ちなみに、戦艦の主砲はメガ粒子砲だが、MSの持つも のは「ビームライフル」と呼ばれる。 次の2つ、ミノフスキークラフトは、航空力学を無視し たホワイトベースが、何故地上で飛べるのか?と言うことを説明したものだ。 ジオン軍からはそのシルエットから「木馬」と呼ばれた ホワイトベースの形状は、空を「飛ぶ」ことは不可能なことは、見て貰えればわかるはず。それを無理やり「浮いて」いることにしたのだ。 そして「Iフィールド」は、後半に出てくるMA(モビ ルアーマー)ビグザムが初めて兵器として装備しているが、高圧の荷電状態のビームが磁場に弱いことを利用した、アンチビームバリアであった。 かなーり簡単に説明したので、わかりづらいと思うが、 どうして人型兵器なのか、という理由が、なんとなくわかればいいので、許して貰いたい。 −一年戦争− 以上で、ガンダムの世界が、多少わかって貰えたと思 う。ここからは、それを踏まえて貰った上で、第一話に到るまでの一年戦争を見てみよう。宇宙世紀0079年1月から8月まで、アムロがガンダムに乗る前の 戦争の話である。 宇宙世紀 0079年1月3日。 ジオン公国は地球連邦政府に対し、独立を宣言。同時に 宣戦を布告した。 宣戦布告と同時に、ジオン軍の艦隊は、地球周回軌道上 の連邦軍艦隊を急襲する。ジオン軍はMSザクを中心とする戦力で、各サイド、サイド1、サイド2、サイド4をも攻撃、BC、及び核兵器を使用して無差別攻 撃を行った。 ジオンの一方的な侵略戦争である。 開戦からわずか48時間で3つのコロニー群は壊滅し、 30億近い人が死んだ。 この攻撃と同時に、ジオンは秘密裏にサイド2のコロ ニー「アイランドフィッシュ」に核パルスエンジンを取り付ける。 コロニーの軌道を外れ、アイランドフィッシュは徐々に 地球の重力に引かれていく。 連邦軍首脳は、その落下地点が判明すると、残存の宇宙 艦隊を集結させた。 南米ジャブローの広大な地下基地。そこは地球連邦軍総 司令部である。『ブリティッシュ作戦』と名付けられたこの作戦の目標が、ジャブローへのコロニー落としだと発覚したのである。 人類史上最大の建造物にエンジンを取り付け、これを1 つのミサイルに見立てて、連邦軍の本部を一気に叩く作戦計画であった。 資源に乏しいジオンは、戦争そのものを短期決着させる ことを目的にしたため、コロニー落としを計ったのである。 落下するコロニーを前に、連邦軍は必死の抵抗をする。 コロニーの破壊そのものには失敗したが、戦闘によってダメージを受けたコロニーは、落下する途中で大きく分裂、ジャブローを逸れたのだった。 最も大きい破片が、オーストラリア大陸シドニー付近に 落下。シドニー周辺は地上から姿を消した。 北米にもコロニーの破片が落ち、北米は大ダメージを受 け、連邦軍にも多大な被害をもたらした。 コロニーの落下が1月10日であるため、ここまでの戦 いを「一週間戦争」と呼ぶ。 1月11日サイド6中立宣言。 サイド6のランク政権は連邦、ジオン双方のいかなる戦 いにも参加しない旨を表明、これが了承される。 1月15日ジ オン軍、サイド5「ルウム」に進撃を開始。 ブリティッシュ作戦の失敗を挽回すべく、ジオン軍はル ウムのコロニーを使い、再度コロニー落としを計る。 一方、連邦軍はレビル将軍率いる宇宙艦隊が総力を挙げ て、これを阻止に出た。 「地球の命運はこの一戦にかかっている。諸君等の奮闘 に期待する」 「連邦め、えらく動きがいいな。指揮官はレビルか」 ジオン軍総司令はザビ家のドズル・ザビ中将。戦力比は 3対1、数の上では連邦軍が圧倒的に優位である。しかもジオン軍は、コロニーに核エンジン取り付け作業をしつつ、という不利な形である。 戦闘が開始され、不利な戦況で推移すると、ドズル中将 はここに到ってコロニー落としを放棄、作業を中断して全戦力を連邦軍に向けた。 数に勝るとは言え、連邦軍は大艦巨砲主義的な、旧時代 の構想のままの宇宙戦艦と、航宙機(宇宙空間用の戦闘機)ソードフィッシュばかりである。 空間戦闘を自在に行うMSの敵ではなかった。 ジオン軍MSパイロット、シャア・アズナブル中尉は赤 くカラーリングされたMS−06Cザクで、戦艦を5隻も撃沈。その戦いぶりから「赤い彗星」の異名で、連邦軍から恐れられた。 そして連邦軍総旗艦アナムケから脱出しようとしたレビ ル将軍が、ジオンのガイア小隊、通称「黒い三連星」に拿捕。 「ルウム戦役」と呼ばれるこの戦いで、連邦は宇宙での戦力の8割を失い、宇宙で の拠点は鉱物衛星であるルナ2のみになる。ジオンは地球周回軌道の制宙権を完全に手に入れたのである。 ルウム戦役での結果に、ジオンは歓喜し、一方で連邦は 意気消沈した。 とりわけ、レビル将軍が捕虜になったことが、連邦軍の 士気を落とさせた。 1月31日、ジオン側からの休戦協定締結の案に対し て、連邦は最早抗すべき手段を持っていなかった。内容はジオンの独立を認めた、事実上の勝利宣言とも言うべきものだ。この協定が結ばれる直前、奇跡は起 こった。 「我々は多くの将兵は失った。しかし、敵もそれ以上で ある」 奇跡は連邦軍にとっての奇跡であった。レビル将軍帰還 す。連邦軍特殊部隊による奪還作戦によっての事である。地球全土にレビル将軍の演説が放送され、後に「ジオンに兵無し」と言われたその内容は、連邦軍に戦 争を継続させるだけの、気力を呼び起こした。 結局条約ではBC、核兵器の使用禁止や月面都市、木星 船団、中立都市への不可侵など、戦時協定が結ばれたのみに終わった。 これが『南極 条約』である。 一週間戦争、ルウムの大敗と続いたこの時点に到って も、連邦軍はまだ事態を甘く見ていたのかもしれない。 彼らが見上げる「宇宙(そら)」の全てが、彼ら以外の 物になった、この時点ですら。 連邦軍は、急遽軍備の再編に迫られていた。同時にMS の開発と実践投入が急務だった。 「MSの開発とそれに伴う運用艦」を「V作戦」と名付 けて行ったが、MSが一朝一夕に出来るものではない。試作新型MSが「ガンダム」であり、TVアニメの第一話である。そしてそれは開戦から8ヶ月過ぎての ことだ。 連邦軍は、負けたのは「宇宙だから」と考えていた。そ して、地球は安全、と今までと同様、スペースノイドを地球から見上げていれば支配できる、という既成概念を安々と捨てようとはしなかったのである。 彼らの白昼夢は、最悪の形で破られた。 すなわち、ジ オンによる「地球降下作戦」の開始である。 南極条約締結の翌2月1日。ジオンは早くも地球攻撃軍 を編成している。かねてよりのギレン・ザビ総帥の腹案であった。 3月1日、第 一次降下作戦開始。 旧ヨーロッパ東部、オデッサを中心とする鉱物資源豊か な地域に、ジオン軍が降下。電撃的な早さで侵攻を開始した。 第2次降下作戦では北米を勢力圏に置く。その際にキャ リフォルニアベースを無傷に近い形で奪取。連邦軍の潜水艦やその情報を、丸々手に入れることに成功した。 この後も順次降下作戦と、先に降りた地上部隊との連携 によって、東アジア、アフリカなどもジオンの勢力圏に入った。 ジオンはかねてより地球侵攻に備えて、地上用の兵器、 陸戦MSも開発していたのであった。 しかし、ジオンも急激な戦線の拡大によって、それ以上 の進撃が続かなくなり、戦況は膠着状況に陥った。 7月に、連邦軍は「エネルギーCAP」システムを開 発。これはMS用に、メガ粒子砲のエネルギーを、小型でも使えるようにするエネルギーパックである。 ガンダムの1号機ロールアウト、RX−78の制式番号 が付けられる。 同時に支援型のMS2タイプも完成しており、RXタイ プの最終テストのためにサイド7へ送られた。 そしてそれをホワイトベースが、受領しに行くところか ら、ガンダムが始まったのである。 −ガンダムとは− 「フィルムを見て下さい」とは富野監督の言葉だが、つ まりはTV放映を見ろと言うことである。放映されているものこそ、全てである、その意味からしても、まずはTVアニメか劇場3部作を見て欲しい。 そこから、ガンダムが始まるのだ。 上記に連ねた話は、あくまで設定や、理解するための情 報でしかない。ガンダムと言うアニメの本質は、もっと別にある。このガンダムの世界の中での、人間ドラマを見て欲しい。人と人が戦い、助け合い、愛し合 い、生きて、死ぬと言うことを。そのためこのコラムでは、人物は歴史的に必要な者以外説明していない。あくまで、予備知識であり、映像を見て欲しいから だ。 アムロと言う、15才のオタク少年が、激変する環境の 中で、戦争のまっただ中に放り込まれつつも、成長していく様を描いたのだ。宇宙版「15少年漂流記」である。 目の前の状況から生き延びるため、アムロやその周囲の 仲間は、悩み苦しみ、それらや友や敵の死を乗り越えて行くのだ。 もちろん、ほんの少し前まで、普通の少年だったアムロ はくじけそうになる。くじけた事もある。だが、結局アムロは立ち向かい、そして生き延びた。 「だいじょう ぶ。あなたならできるわ」 大気圏突入直前、戦いに出る前にセイラさんがアムロに 言う台詞である。これはガンダムを見ている少年少女達に、問いかけられた言葉でもある。 この言葉の意味を語る必要はないだろう。見れば、各々 がちゃんと理解できるはずだから。 まずは、見て欲しい、それだけだ。 君 は、生き延びることができるか。 <参考文献・資料> ・TV版機動戦士ガンダム ・映画版機動戦士ガンダム3部作 ・『機動戦士ガンダム 宇宙世紀vol.1歴史編』 1998 ラポート ・『機動戦士ガンダム大事典』1991 ラポート ・『機動戦士ガンダム 一年戦争外伝』1997 メ ディアワークス ・『機動戦士ガンダムIII大百科』1982 頸文社 |